【編成】弦楽三重奏~弦楽合奏
【収録曲】グリーク作曲「遅すぎた春」
【編曲者】P.J.Moore、S.J.Downing
【出版社】Dr Downing Music

グリーク作曲の「2つの悲しき旋律」の第2曲「遅すぎた春」を、より少人数で弾けるように編曲したもの。

だが、普通の編曲ではない。

この「Music Made to Measure」というシリーズ、演奏者の人数が柔軟な楽譜なのだ。

例えば「遅すぎた春」の場合、パートは全部で8部に別れており、そのうち最低3パート分以上の奏者がいれば、一応の合奏ができるようになっている。原曲から部分的に声部を入れ替えつつ巧みに音が振り分けられ、この仕組みを成立させている。

さらに8パートの内、中声部はト音記号譜とハ音記号譜、低声部はハ音記号譜とヘ音記号譜の各2種の楽譜が用意されている。

つまり、様々な楽器と人数の顔合わせで自在に合奏を楽しむことができるようになっているのだ。

誰でも思い付きそうなアイデアではあるものの、おそらくシリーズ化されている例は他に無いのではなかろうか。

楽譜には、最低人数の3人の時にはどれとどれ、4人の時にはどれとどのパートを使えばよいかが書かれている。やはり低音とメロディーは外せないので、柔軟とは言ってもvn×3人やvc×3人ではちょっと厳しいが、それにしても結構な柔軟性である。

少ない人数で弾いてみると、やや寂しくはあるもののアンサンブルの楽しさは十分。大人数で弾くと、もうほぼ原曲と大差の無いゴージャスな響きがちゃんとする。譜づらも簡単だし、集合練習開始前などの時間潰し用として1冊常に持ち歩くのも悪くないな、と思わせる出来だ。

このシリーズ、まだまだ曲数が少ないのだが、スコット・ジョプリンなど他にもおもしろそうなものがある。さらなる充実に期待したい。

ところで、出版社名にも編曲者名にも名前が出てくるぐらいであるから、ダウニング博士が本シリーズの企画元なのだろう。それにしても、なにゆえにこのように簡単明瞭で短い曲の編曲を2人がかりで? 意外に、この「Dr.」は物理博士とか医者とか、ぜんぜん音楽と縁の無い肩書きだったりして。