「演奏会を目指す・目指さない」という話も出たが、それでもまあ、演奏会は楽しい。学園祭や村祭りが楽しいように、楽しい。準備も楽しいし、当日も楽しいし、終わった後に手の中に残る思い出も楽しい。
さて、そういった機会をどのようにして見つけていくか?
普通にホールなどを借りて企画していく手順はだいたい想像がつくであろうから、ここではあまり会場費などに自腹を切らずに演奏できる事例をいくつか挙げておきたい。
まずは、「練習会場探し」編でも取り上げた「飲食店」でやらせてもらう、というパターン。
パーティー慣れしている人気店で相談をすると、すぐに「会場をお金をもらって貸す」話に突入してがっかりさせられることも多いけれど、いくつものお店に丹念にあたっていくと、ときどき「じゃあ共同企画で」などと前向きに演奏の場を与えてサポートしてくれるお店に出くわすことがある。そのお店のコンセプト次第で演奏曲目に若干の縛りが出ることは覚悟がいるが、特に地方都市では絶対に挑戦してみるべき分野と思われる。
また、同じく「学校」も良い狙い目だ。こちらは音楽教室という形態に自動的になってしまうが、それはそれで決して気分の悪いものではない。手抜きなど絶対できないのも、普通のコンサートと同様。
音楽教室の演目は、半分を音楽教室専用に固定しておくと準備がラクだ。ときどき、なぜか律儀に音楽教室イベントの都度にまったく違うプログラムを並べる努力をしている団体があるが、これは手間の割には報われない練習になりがち。割り切ってMCまでいつも同じプログラムにしておくべきだろう。そして残りの半分に、その折々の自分たちが取り組んでいるクラシック曲を持ち込めばよい。
音楽教室用のメニューは、人気のポップスやディズニー・宮崎アニメ曲など、ウケを狙うアレンジ曲に、楽器紹介など。余談になるが、弦楽四重奏でも「あなたも指揮者」という、オーケストラの音楽教室によくあるコーナーを成立させることはできるので、ぜひお試しいただきたい。
この音楽教室パターンを持ち込ませてもらえる施設・団体は少なくない。老人ホーム、養護系の病院の慰問は、あなたに一定水準の技量があって曲目選定さえ間違えなければ、常に歓迎されるものであることは覚えておいてよいだろう。
行事に飢えている子供会や商店街も多い。普段からいろいろな人に話をしておけば、声をかけてもらえる機会は想像以上にあるものだ。
もう少し普通にクラシック音楽好きの人達に聴いてもらいたい、という場合には、地元の公民館の事務の人などに相談するのもよい。地域の合同音楽祭、といった知られざるイベントを紹介してもらえる可能性は決して少なくない。
ところで、単純に聴衆の数を増やすことが主眼なら、普通のホールや公民館で行う演奏会でも、チラシを近辺の家々の郵便受に配布しておく、という手がある。どうせ無料で行うというケースが圧倒的に多いだろう。無料なら、100軒も配れば必ず4~5人は物見高い人たちが来てくれるものだ。演奏会場の近隣の家に、というのがポイント。
そして、もし自分たちの音楽に自信があるなら、演奏会当日にアンケートを書いてもらい、次の演奏会前には記入いただいたアドレスにメールやハガキで事前案内を送ることで輪を広げていくことができるだろう。
アマチュア音楽家でも「町の名士」ぐらいにはなれるかもしれない。いろいろがんばってみよう。