弦楽四重奏曲にcbを追加する、弦楽合奏化する遊びのおもしろさについては前項に開陳している通りだが、この「cb隠し味」の遊び、実は他の編成でもおもしろいのだ。
弦楽五重奏以上の大編成については説明不要だろう。編成が大きくなればなるほど、むしろ「cbを入れずに演奏することの不自然さ」が大きくなるとさえ言い得るのであり、例えばブルッフの弦楽八重奏のようにcbを入れることが半ば慣例化している曲だって存在する。
それよりも興味深いのは弦楽三重奏、二重奏のような小編成の曲でのcb追加だ。騙されたと思って挑戦されることをお勧めする。
例えば太公トリオにcbを追加してみよう。堂々とした曲柄に見合った深い響きが得られて、非常に興味深いものになる。これ、実はcbとpfの相性のよさによる効果なのだ。
pfもスチールの弦を叩いて音を出している楽器だからであろうか、低音域の音色の親和性には特筆すべきものがある。頭打ちをcbが手伝うとpf奏者のタッチが全体的に強靱になったかのような感じになるし、pfで実現できない持続音がを音楽的に必要な場面でのアシストの効果も絶大だ。
反面、小人数編成の室内楽はソリスティックな要素がより強いので、重くしてしまったり、あまりに立体感が増して親密度が失せることのないよう、cb側の音選びは大編成の時以上にシビアな感覚が要求されるかもしれない。
そういうことができる人がいるなら、ソナタのような二重奏へのcb追加にも挑戦したい。極端な例を紹介すると、管理人は以前、べートーヴェンのスプリングソナタにcbを追加してみたことがある。cbの出番は決して多くはなりえないのだが、奏者も創造的な音の追加を楽しめ、ふくよかなサウンドが心地よかった。
また、2人~3人という小さい編成の場合でも、大きい編成での追加の場合と同様、現代ポップス曲では例外なく素晴らしい結果が得られることを付け加えておく。