額面上の楽器編成に拘りすぎて人集めがうまくいかないと、演奏のチャンスそのものを逃してしまう。そういう時のために、前項のcb追加の話以外のヒントを、若干邪道なものも含めてご紹介したい。

弦楽四重奏を大人数で
たくさんの優良な作品が揃っている弦楽四重奏曲は、ほとんどの場合、弦楽合奏として演奏することが可能。これはかなり一般的な知恵だが、実際にはcbの追加方法など、それなりに工夫と試行錯誤が要求される。準備時間に余裕がある時でないと演奏としての成功は望めないことは覚えておきたい。


電子キーボード活用
ハープ、オルガン、チェンバロ、打楽器等、特殊楽器の多くは電子キーボードで代用することが可能。最近の楽器は本当に音質がすばらしい。ソロのフレーズがあまり無ければ、コントラバス、チェロも電子キーボードで代用できる余地がある。

なお、キーボード本体のスピーカーだけでは音量不足となる可能性があること、電源が確保できないかもしれないことなど、本番会場での事前調整は必須。「あ、あれが足りない」と気づいてから、それを克服する時間が要るのだ。


いくつかパートが無くても気にしない
バロック音楽の通奏低音はチェンバロが必須ということになっているが、ほとんどの曲はチェンバロ抜きでも「弾いて楽しい曲」として成立する

(例えば、弦の他にHr×2本、ob×1本を要求されている楽曲を、弦とHr1人だけで遊んでもさほど支障が無い可能性がある。)さらにひどい話としては、一部の天才、異才作曲家を除くと、バロック・古典あたりまでは、vlaがほとんど音楽的に寄与していないような書き方をする作曲家は数知れず。ただ、vlaの場合は第3Vn設定という、子供の合奏団でよく使われる手間のかかる方法での対応のほうが正道かもしれないが。


指定人数に拘らない
小室内楽曲の演奏に際し、奏者の技量にかなりの差がある場合に弱いパートを複数の人間で弾くことは恥ずかしいことではない。むしろ、初心者に室内楽の門戸を開く良い機会になり得る。


曲目構成自体を変えてみる
5~6人以上の奏者がいてパート間が不揃いの場合には、無理に全員参加できる妙な編成の楽曲を探さず、部分的に降り番を作って複数の名作弦楽四重奏曲等に並行して取り組んだほうが楽しい。