【編成】フルート、ヴァイオリン、ピアノ3重奏
【収録曲】バッハ作曲 ブランデンブルク協奏曲第5番
【編曲者】岡村考二
【出版社】龍吟社・リズムエコーズ

編曲譜の中には、楽譜上の編成そのものは小さく一応完結しているのに、いくらでも他の楽器を足して演奏を楽しめるものがある。例えば、このピアノとヴァイオリン、フルートのために編曲されたブランデンブルグ協奏曲第5番。主要なソロパートを参加楽器に残し、それ以外を適当にピアノなどに分担させたもので、3人いればすべての音が揃う。

ここへ、他の弦楽器奏者にリピエーノ(=その他大勢の伴奏パート)譜を持たせて一緒に演奏させてみよう。奏者の顔ぶれ、人数に関係なく自在に合奏のできるアンサンブル曲の完成だ。

基本の3人+ヴァイオリン1人+チェロ1人でも、3人+なぜかビオラが2人とバス1人といったような顔ぶれでも、とにかくどのような取り合わせでもOK。

有名曲のリピエーノ楽譜は、今やIMSLPなどネットで簡単に無料入手できる。

合奏遊びをする家庭で、このような「誰でも参加歓迎」型の柔軟な楽譜を常備しておくのは、なかなか悪くないおもてなしアイデアのはずだ。

そんなことができるからといって、さすがにバッハの傑作を下敷きにしたアレンジ譜だけあって、決して作りは単純ではない。

求職活動のための作品とも言われるブランデンブルク協奏曲シリーズの中にあり、第5番は新しく購入したチェンバロの性能を活かしつつ、華やかさと優美さを兼ね備えた大きい構えの合奏協奏曲として、自身の音楽性を最大限にアピールするものに仕上げられている。

そういう弩級の名曲に対して、この編曲者は力むこともなくシンプルイズベストな切り貼り編曲に徹している。声部が足りないところも、無理をせずに他のパートを参考譜として書き込む程度にとどめ、凝ったアレンジを避けている。

こうしたところが、本楽譜を人数追加の合奏遊びに最適な素材としているわけだ。

さて、この譜面の出版元である龍吟社は戦前からある古い会社でポピュラー系の教則本など様々な音楽関係書を発行していた。

今回これを書く上で販路をチェックをしたら、残念ながら数年前に倒産していたことが判明。倒産時に多くの版権はサーベル社が買い取っているようだが、なぜかこの楽譜については再販しておらず。

使い勝手のよい楽譜なのにもったいないことだ。