【編成】弦楽四重奏
【収録曲】ジ・エンターテナー、ニュー・ラグ、ラグタイム・ダンス、他
【編曲者】Christa Sokoll
【出版社】Otto Heinrich Noetzel

ウィーンのポルカやスーザなどのマーチを黒人流儀に崩したものから発展したとも言われるラグタイムは、その出自の通りジャズと欧州のクラシックの中間的な音楽であり、結果として弦楽器との相性もすこぶる良い。

とりわけ、映画「スティング」をきっかけとして「ジ・エンターティナー」などが見事にリバイバルしたラグタイム王のスコット・ジョプリンの一連の作品は、多くの弦楽器奏者にとり身近な存在だ。

さて、いくつもあるラグタイムの楽譜の弾き比べは、なかなか楽しい経験である。これらの楽曲たちは、単純に見えて、あるいはそれゆえにか、意外なほど様々なアレンジパターンが存在する。

ここで取り上げたものはドイツ(!)のNoetzel版のもの。ドイツというだけで違和感があるし、その上に同出版社はクラシック主体で、Christa Sokollという編曲者も他の出版譜で見る限りポピュラー物のアレンジを主体に活躍している人ではなさそうだし、なにやら相当にラグタイムからは遠そうだ。

で、弾くとどうなるかと言うと、これがやはりドイツ系なのだ。各パートは丁寧に書き込まれており、やや音響的には暑苦しいのだが、よく響く。すべての段の左上にしっかり小節番号が入っていたり、律儀に音量記号や発想記号が設定されていたりと、楽譜の作りもドイツ的。

こんな曲にクレッシェンドやデクレッシェンドなどで細かく表情付けをするに至っては、あきれて苦笑するしかない。

しかし、いろいろと弾き比べてみると、管理人としてはやや気軽にすぎる米国系アレンジ譜などよりもこちらのほうが好みだったりするのだから世の中わからない。

この1冊の曲集に並んでいる4曲の調性や順番も計算されているようだ。というのも、そのまま全曲を自然に続けて演奏できるようにもなっているからである。繰り返しまで含めると、なんと15分近くも連続してラグタイムを弾き続けることができるようになっている仕掛けだ。こういうところの凝り方もドイツ的と言えなくも無い。

ドイツの譜面でラグタイム。お試しあれ。

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