音階だったり練習用の童謡だったり、初心者の内は開放弦バリバリで弾いたものだ。
が、そのうちさりげなくいろいろなポジションを駆使して大人の音色を奏でるまわりの上級者に憧れつつ、「開放弦=初心者の音」というイメージが体に叩き込まれたりして。 実際、多くの人の深層心理に開放弦は「=忌むべきもの」という感じで定着しているのではないか。
大編成の中で大きな音に埋もれて弾いているようなときはともかく、自分の音が目立つシチュエーションでは、指が苦しくてもあからさまな開放弦は使いにくい。どうしても気恥ずかしさが先に立って、隣の弦の同音に逃げてしまいがち。でも、開放弦は音程が安定していて、とても「使える」存在だ。
メロディーを担う奏者はどうしても音程が高めにいく現象がおこりやすいが、開放弦利用はこれを戒めてくれるし、近代曲の気難しい転調の嵐の中で頼れるアンカーの役目も果たしてくれる。
アンサンブルがうまく聞こえるかどうかは、まずは音程にかかっているわけだから、安全第一・音程第一で開放弦を極力使用するという手はアリだろう。
実のところ、古楽で開拓されたノンビブラートの効用を積極活用する流れや、大ホール対応のために奥ゆかしいハイポジションよりも低ポジションでのしっかりした音出し重視するという流れと関係するのか、プロの室内楽奏者達も、よく見ると非常に頻繁に開放弦を使いこなしてうまく曲を仕上げているようだ。
楽に安定した音程が得られるのは、奏者の精神面の負担軽減にも効果大。いかがでしょう?